ひと目でピンとくる 伝わる写真の撮り方

電球スプラッシュ

はじめに

ときどきプライベートな遊びとして、何気ないものを非日常的に表現する物撮りをしています。そうやって撮った写真を人に見ていただくと、ありがたいことに興味を持っていただき「どうやって撮るの?」と質問をいただくことがけっこう多いです。そこで、今後定期的に物撮り作品を紹介しながら、どのようにして撮影しているか解説を書いてみます。

今回の作品は見ての通り電球です。電球に水をぶっかけるとこういった感じでガラス管の周囲を水が羽を描くように飛び散る瞬間があるので、タイミングを合わせてシャッターを押すわけです。

なお、このモチーフは自分で思いついたものではなく、海外のフォト系YouTuberの動画を巡っていて見つけたものです。電球に水をぶっかけるという表現そのものがとっても目新しく興味深かったので自分でも撮ってみようと思ったわけです。ちなみにこの動画を公開しているAdoramaというチャンネルでは様々なジャンルの撮影ノウハウを展開しているので、写真に興味がある方はぜひ見てみてください。

セッティング

まずは被写体のセッティング。電球に水をぶっかけるわけですから、水が飛び散ってもいいように大きめなダンボールを用意してビニール袋を敷きます。その上に黒アクリル板をセット。アクリルの上に”ねりけし”をくっつけて、電球を立てた状態で固定します。

被写体と背景の間は50〜60cmほど離しています。そうすることで背景をボカして手前の電球をバキッと際立たせます。また、背景が近すぎると、ぶっかけた水でトレペがヨレヨレになってしまいます。

セッティングを図にするとこうなります。被写体の背景にはトレーシングペーパーを2枚重ねにしてまっすぐ垂らして、その背後から定常光のライトを一発照らします。照明にはLitra Pro(リトラプロ)という撮影用の小型LEDライトを使っています。高価な撮影用ライトを使ってもいいのですが、こういったシンプルなセッティングでも必要にして十分だったりします。極端な話、よくあるLED懐中電灯みたいなものでもOKです。

手前に設置したカメラは三脚でガチガチに固定して、以下のような設定値に合わせます。

カメラEOS 5D MarkIII
レンズEF100mm f/2.8L Macro
ISO感度6400
露出プログラムマニュアル
シャッタースピード1/8000
絞りf/6.3

撮影の段取り

さて、セッティングが整ったところで、いよいよ撮影です。部屋の電灯を消して被写体背後のLEDライトだけ点灯した状態にします。ちなみにカメラの上にフラッシュのリモートトランスミッタがついていますが、この作品を撮影するときの照明にフラッシュは使っていません。実はこの撮影時にフラッシュとLEDライトの両方で撮影を試していてたのです。

フラッシュを使った撮影

カメラのシャッタースピードではなくフラッシュの発光時間で水の動きを止めます。フラッシュは光量を弱くすればするほど発光時間は短くなるので、1/128や1/64で発光させることで水の動きをしっかり止めるわけです。ですが、この方法で撮ると1回の発光タイミングで1枚しか撮れません。できれば連射で複数チャンスを狙いたかったのでフラッシュでの撮影をあきらめてLEDの定常光での撮影にチェンジ。

LEDライト(定常光)を使った撮影

そのようなわけで、LEDライトにセットを変更。定常光なので同調の制約はありませんが、絶対的な光量としてはフラッシュに比べて圧倒的に暗い。そのためシャッタースピードを稼ぐためにISO感度を上げなければなりません。そのようなわけで前述のようにISO6400でシャッタースピード1/8000というセッティングに落ち着きました。ちなみに撮影に使ったLEDライトはLitra Torchという超小型の高出力ライトです。

こちらが前述の最終形態で撮影した写真。LEDライトの中心点が電球のど真ん中に重なるように位置を調整します。ここまでご覧いただいたように、この撮影のセッティングそのものは極めてシンプルです。背景はトレペですし照明もLEDライト一発だけです。カメラもAPS-C機とズームレンズという組み合わせだって問題ありません。

この撮影のもっとも手間がかかるのはここからです。電球に水をぶっかけて形のいい水しぶきを作り、しぶきが大きく広がるタイミングに合わせてシャッターを押すわけです。なかなか思うようなしぶきを作れず、結果的に748枚も撮ってしまいました。

さいごに

そうやって何度も何度も水をぶっかけて、「まーこのあたりかな」と思えたテイクがこちらです。

表現したかったのが”天使の輪”と”花びら”です。電球上部で紐状の跳ね返りが写っていると思います。これが天使の輪。そして電球外周部に薄く飛び散っている水の広がりが見えると思います。こちらが花びらです。本当は天使の輪も花びらももうちょっと大きくしたかったのですが、水のぶっかけっぷりがけっこう難しく、このあたりが限界でした。

いかがでしたでしょうか?一見すると難しそうに感じるかもしれませんが、セッティングそのものはとてもシンプル。あとはみなさんの水のぶっかけ方ひとつで全く違うしぶきの形が表現できると思います。

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