ひと目でピンとくる 伝わる写真の撮り方

三脚を使う目的と選び方

はじめに

みなさん、写真を撮るときに三脚は使っていますか?そもそも三脚とはどういった時に使っていますでしょうか?夜景スポットで写真を撮っている人、公園に美しく咲いた花をアップで撮っている人、集合写真で自分を含む集合写真を撮る人などなど。こういった場面では三脚を使って写真を撮っている人を多く見かけます。この人たちは何を目的に三脚を使っているのか。一般的に三脚を使う目的は大きく2点です。

1.手ブレ防止
2.構図の固定

手ブレ防止目的の三脚

手ブレ防止は読んで時のごとく。最近カメラを買ったばかりの写真ビギナーでも、百戦錬磨のプロフォトグラファーであったとしても、手ブレを経験したことない人はいないと思います。撮影後に背面液晶で「よし!素晴らしい写真が撮れた!」と確認したとしても、帰宅後にPCで写真を開いてみたら結構派手に手ブレしていた、ということは誰しも経験したことがあるのではないかと思います。

一般的に手ブレを防ぐ方法は3つしかありません。

1.シャッタースピードを上げる(そのためにISO感度を上げる or 絞りを開く)
2.手ブレ補正つきのボディやレンズを使う
3.三脚を使う

シャッタースピードを上げるのは最も手っ取り早い手ブレ防止の方法なので、誰しも一度は「手ブレするからシャッタースピードを上げよう」と調整したことがあると思います。フィルム全盛の時代はISO感度がフィルムごとに固定されているため、シャッタースピードを上げるためにはフィルムを高感度のもにに入れ替える。もしくはレンズの絞りを開くしか手がありませんでした。撮影の途中でフィルムを入れ替えるのはコスパが悪すぎるので一義的にはレンズの絞りで調整することになります。例えば絞りf/8.0で撮っていたときにシャッタースピードを上げたいと考えたときにf/5.6、f/4.0と絞りを開くことで1段分、2段分と余裕ができますので、例えばシャッタースピード1/30で手ブレに苦労しているので1段分早くして1/60、もう一段早くして1/125となります。これで多少シャッタースピードが稼げます。

余談ですが、はるか昔、f値が小さい大口径単焦点レンズのことを「ハイスピードレンズ」と言っていた時代がありました。これはf値が小さくできる=シャッタースピードを速くできるということからついた呼称です。フィルムの最高感度はせいぜいISO1600ですから、暗所で手ブレのない写真を撮るには絞りを開くしかなかったわけです。f/2.8のレンズよりもf/1.4のレンズの方がシャッタースピードを2段早くすることができます。

とは言っても絞りでシャッタースピードを調整するにも限界があります。前述のようにISO100で絞りf/4.0でシャッタースピード1/125というと雨天の屋外でだいたいこれぐらいのセッティングです。室内や夜間はさらに数段分暗くなるので、もはや絞りでなんとかできる範囲を超えてしまいます。

最近ではどのメーカーからも手ブレ補正機能のついたボディやレンズが発売されていますので、この機能を使うことで3〜5段分ぐらいの手ブレ補正効果が見込めます。例えばシャッタースピードが1/125で手ブレしないギリギリのラインだったとした場合、5段分の手ブレ補正効果となると1/8でも手ブレのない写真を撮ることができます。ですが、手ブレ補正機能のついたボディやレンズは増えてきたとはいえ、それなりの高価です。

そんなわけで三脚の登場です。フィルム時代から手ブレを防ぐといえば、まず思いつくのは三脚でした。前述のようにレンズの絞りや手ブレ補正で対処できるとはいえ、それでも限界があります。特に夜間に車のヘッドライトの光跡を撮影るようなシチュエーションでは表現上シャッタースピードを早くするわけにはいきませんので、そういった状況では三脚一択となります。

構図固定目的の三脚

手持ちの撮影となると、人間の体はどうしても前後左右に動いてしまうので、全く同じ構図で撮影できることはできません。でも三脚いガッチリ固定しておけば全く同じ構図のままで何枚もシャッターを切ることができます。例えばこの写真のように人物のポートレート撮影ではライティングをしっかりとセットして、最も美しく光が当たる場所を作り上げます。と同時に、このポジションをズレなく撮るために、カメラも三脚に固定してしまいます。

物撮りも同様です。被写体の意図を最も正しく表現できるポジションにカメラをセットして、そこから照明を組み上げていくわけです。時間をかけて照明を組み上げて、いざ撮影しようと思ったら当初想定していたポジションからズレてしまっていた。といったことになると意図通りの表現ができなくなってしまいます。

もう一つ、三脚を使って構図を固定するメリットがあります。それは同ポジションでの連続撮影が可能になるということです。例えばこの写真のような商品撮影をイメージしてみてください。この場面では口紅を撮影していますが、実際EC用の商品写真を撮るような状況では、同じタイプの口紅だけど色違い、シリーズ違いなどで、似たようなサイズの商品バリエーションがたくさん存在することがあります。そういったとき、最初にカメラ位置と照明をガッチリ仕上げておきさえすれば、あとは商品を置いて、撮って、ハケて、そしてまた次の商品を置いて、撮って、ハケて、と連続撮影ができるようになります。被写体が1つだけであればいいのですが、実際は一度にたくさんの商品を撮影することの方が多いと思いますので、このように撮影業務の効率化のためにも三脚の使用はとても重要であると言えます。

初めて三脚を購入する際の逡巡

三脚の用途を長々と書きましたが、では実際にどういった三脚を選べばよいのか。カメラ屋などで三脚を選ぼうとすると、まず悩むのは材質だと思います。

アルミ製:重いけど値段が安い
カーボン製:軽いけど値段が高い

特にカメラを買ったばかりで、今後どういった撮影が多くなるかあまりイメージが固まってない方の場合は「そんなに持ち歩かないかもしれないけど、年に数回の旅行に行くときに持っていくことを考えると軽い方がいいかも」といった感じで、最大公約数的になるべく1本の三脚で全てのシーンの撮影をまかないたいと考えるものです。そう考えると軽くて丈夫なカーボン製の一択となるわけですが、いかんせん値段が高いのです。安価なものでも4〜5万円はします。

初めてのカメラデビューとして、いわゆるエントリー機のEOS Kiss X10レンズキットを8万円で購入したとします。初めてのカメラとしてはこの金額でも十分に高価なわけで、そんな大型出費の直後に三脚を買おうとして4〜5万円もかけようとするかというと、ほぼ間違いなく躊躇します。

躊躇した結果、背に腹は代えられないということでアルミ製に目を向けることになります。そうすると2〜3万円で購入できることがわかり、本当は軽い方がいいけど「ひとまずこれで様子を見るか」とアルミ製を購入するに至る。というところまでが、初めての三脚購入でありがちな一連のテンプレです。

ここで一点みなさんにお伝えしたいのは、三脚は使ってナンボでして、持ち出すのがめんどくさいので本当は使った方がいいけど持ち出すのを諦めるというのが最ももったいないわけです。これはカメラ本体にも言えることで、例えば本気で写真に取り組もうと清水の舞台から飛び降りた気持ちでEOS 5D MarkIVなどのフルサイズ機とEF24-105mm F4Lのセットを購入したとします。購入直後はこのセットをどこに行くにも持ち出してみたものの、セットで1.7kgの重量を常に持ち歩くのはけっこう厳しい。次第にこれらを持ち出す機会が減ってきて、普段のレストランや友達と遊ぶときなどにとどまらず、旅行に出かけるような時ですらこのセットを持ち出さず、ほぼ全ての写真はiPhoneのカメラだけで満足しちゃう。そういったことが往々にして起こります。

特に三脚は撮影現場のコンディションにもよりますが、持っていなくても撮影自体は可能で、あれば便利といったものなので、ついつい持ち出すのをためらってしまいます。軽量なカーボン三脚ですら1.5kgほどもあるのでなおさらです。三脚を使ったときの効果は絶大です。とても安定した写真を撮ることができます。ですが、その分持ち運びがめんどうで、いざ撮影しようと思ってからセットが完了するまでに時間を要するので、パッと目にした光景をすぐ撮るといった現場には三脚は向きません。

ちなみに、カメラ屋に行くと大手三脚メーカー製で1万円未満で重量1kg以下の商品が販売されていますが、これらの購入はお勧めしません。カメラを固定してくれることはしてくれるのですが、狙ったところにビシッと固定することが難しく、足にちょっと触れただけでも振動がボディにビビッドに伝わってしまうのです。もちろん手持ちの状態よりはカメラをしっかり固定してくれるのですが、三脚を使っているにも関わらずカメラの固定に難儀することになるので、そうであるならば多少ISO感度を強引にでも上げてシャッタースピードを上げた方がフレキシビリティが高くてよかったりします。私から言わせてもらうと、この手の三脚は安物買いの銭失いです。安くて軽いので、一見魅力的に感じるかもしれませんが、意図した効果が得られないので、やめたほうがいいです。

まとめ

ぶっちゃけますと、三脚はなくてもほとんどの写真は撮れてしまいます。それでも三脚が存在し続けているということは、三脚があることによって「より便利に撮れる」「よりかんたんに撮れる」むしろ「なければ撮れない」という状況が存在するということです。三脚の購入を考えてられる方は、どういった場面で何を撮るかよく見当されて、用途にあったものを選ばれることをお勧めします。

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