ひと目でピンとくる 伝わる写真の撮り方

「EC商品写真」作例の撮影風景

はじめに

公開済みの「EC商品写真】商品写真とはどういうものか」の記事中で掲載した「EC商品写真」作例の撮影風景を紹介します。

ECショップの運営をされている方は皆がみな写真撮影が得意なわけではなく、プロフォトグラファーとして写真を撮りたいと思っているわけではなく、商品を売ることが何よりも重要であろうかと思います。そのためには時間をかけて凝りに凝った美しい写真を撮るのではなく、売れるために必要にして十分なクオリティの写真を、できる限り短い時間でスピーディーで撮影できることが重要だと思います。やり方は様々ですが、今回の作例では簡易撮影スタジオを使ってみました。

撮影シーン

簡易撮影スタジオってご存知ですか?組み立て式の立方体の箱でして、側面や天面が白くなっていて、この中に被写体を置いて撮影します。構造はとってもシンプルです。撮影ボックス、ライトボックス、撮影キットなど呼び名は様々ですが、どれも基本的には同じものです。

普通にテーブルの上で撮影するのと、このボックスを使って撮影するのと何が違うのか。簡易撮影スタジオを使って商品撮影を行うメリットは大きく2点です。

背景をRにセットできる

撮影風景の写真をご覧いただくと、被写体を布の上に置いているのがおわかりいただけると思います。この布はボックスの上部にマジックテープで止めていて、ボックスに沿って四角く布を這わせるのではなく、あえてふわっとカーブをつけて垂らして使います。こうすると背景に段差がなくなり白一色の背景ができあがるのです。試しにテーブルの上に普通に被写体を置いてカメラで撮影してみてください。被写体を置いているテーブルの天面と壁との間の境目が写り込んでしまうと思います。商品を実際に利用しているシーンの撮影であればテーブルや背景など複数の要素が入ってくるのも問題ないのですが、ECモールで商品写真1枚目として登録する写真の場合は無背景の商品単体写真であることが望ましいので、背景が映り込むのは避けたいところです。そういった時に前述のように背景布をカーブして垂らすことで撮影したときに背景の継ぎ目がなく無背景の写真を撮ることができます。ちなみにRというのはRadiusの略で日本語で半径と言います。道路や線路のカーブのこともRと表現されます。ここでいうRは背景を曲線でセットするという意味です。

キレイに光がまわる

オフィスや自宅のテーブルに商品を置いて何気なく写真を撮影してみたとき、いまいちキレイに撮影できなくて悩んだことってありませんでしょうか。要因は被写体や撮影環境によって様々ですが、光がうまく当てられないことが原因であることがとても多いです。一般的なオフィスでは天井に蛍光灯が設置されていることが多いと思いますが、この蛍光灯だけで撮ると光が当たっているところが明るく、当たっていないところは濃い影になるといった具合に、被写体に強めの陰影がついてしまうのです。

商品写真では濃い陰影がつくのは一般的にマイナス要素です。商品の特徴をしっかり見せるべき写真に濃い影が入っていると、影に隠れてしまった部分が見えなくなってしまいます。そこで商品写真では一般的に陰影が少なくなるように「やわらかい光」を照射して被写体全体にキレイに光をまわすようにして撮影を行います。この「やわらかい光」とはなんぞや?ということを説明すると長くなるので、あらためて別エントリで説明します。

このボックスは左右天面の3面が半透明になっていて光を通す構造になっています。天井の蛍光灯から照射された光がボックスの半透明面を通過すると光が拡散して、ボックス内にやわらかい光が満たされます。そこに被写体を置くことで被写体の上下左右から光が当たっている状態を作れるのです。

簡易撮影スタジオの考察

【EC商品写真】商品写真とはどういうものか」の記事中でも記載しましたが、この簡易撮影スタジオにはかなりのバリエーションがあります。今回紹介したのは左右両サイドと天面が半透明なタイプですが、中には内側が白くて外側が黒いタイプのものがあります。私のお勧めは前者の半透明なタイプのものです。外側が黒いものは天井の蛍光灯など外部の光をボックス内部に入れることができません。天面にライトをセットしてボックス内部で光を回して明るく撮るタイプのものなのですが、これだとライトのセットを間違うと光がうまくまわらず、ダウンライトの環境下で撮影したような写真になることがあります。左右にもライトをセットして全体を明るくすればいいじゃないかと思われる方もいるかもしれませんが、光源が増えれば増えるほど想定外の陰影がついてしまって収集がつかなくなってしまいます。そのようなわけで、左右両サイドと天面が半透明なタイプのものをお勧めします。なお、このボックスはサイズのバリエーションも多いので、撮影される被写体に合ったサイズのものをお選びください。

まとめ

そうやって簡易撮影ボックスを使って撮影したのがこちらです。この写真は前述のようにボックスの中にリップを置いてプラスの露出補正をかけて撮影しただけです。ライティングは特段なにもやっておらず、光源は天井の蛍光灯だけです。なお露出補正については以下の記事をご参照ください。ボックスの中は白背景ですのでオートで撮ると薄暗くグレーっぽい写真に仕上がりますので、露出補正を手動でプラスにして明るく撮るようにしてください。

最後に重要な話を一つ。「カメラ内蔵フラッシュのオート直当て」はNGです。「撮影しようと思ったら暗いからフラッシュを発光させて明るく撮ろう」と思われる方も多いと思うのですが、カメラ内蔵フラッシュの発光は百害あって一利なしです。前述の簡易撮影スタジオを使って撮影したとしてもカメラ内蔵フラッシュを発光してしまうとせっかくボックスを使って撮ったものが台無しになってしまいます。

フラッシュは光の方向をつけるたり陰影をコントロールするために使うものであって、写真を明るくするために使うのは避けたほうがいいです。写真を明るくするにはISO感度を上げたり露出補正をプラスにするものなのです。フィルム写真が全盛の時代は「暗いからフラッシュを発光させて明るく撮る」という用途もあったかもしれませんが、昨今のデジタルカメラは高感度でもキレイに撮れるので、写真全体を明るくするにはISO感度を上げた方がキレイな仕上がりになります。フラッシュの使い方は別エントリで書く予定ですのでご期待ください。

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