ひと目でピンとくる 伝わる写真の撮り方

記者会見の撮影方法と画作りのポイント

はじめに

2022年12月中旬にLINE・Yahoo! JAPAN・PayPay3社合同の記者発表会が開催され、私が公式写真の撮影を担当しました。今回の記事では、この発表会をケーススタディとして記者会見の撮影ポイントを紹介しつつ、公式撮影の役割も合わせて説明します。

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記者会見とは

今回の記者発表会の会場は六本木のANAインターコンチネンタルホテル東京です。記者会見が行われるときは、まず主催企業から報道各社に「この日にこういった趣旨の発表を行います」という連絡が届きます。それを受けて各社は記者や撮影クルーを会見会場に派遣します。

記者会見の段取り

基本的にはこのようにプレゼンが行われるステージや記者の座席が用意されています。記者はこの座席で写真を撮ったり記事を書いたりするわけですが、中にはその場で写真のセレクトから記事のドラフトまで仕上げて本社に送信まで済ませることもあります。

会場の最後列はムービー撮影台。テレビ局の報道スタッフなどが持っているムービーカメラは大きくて、会場の前方に配置されると後ろに座る記者から演台が見えなくなってしまう可能性があります。ですので、ムービーカメラは一番後ろに配置されることが多いです。

最近では会見場でのリアル開催だけでなく、現場に来場できない記者も視聴できるように配信も行われています。この配信用の映像を撮影するオフィシャルムービーカメラはステージ真正面のど真ん中に配置されます。

そしてステージ目の前のスペースがスチルカメラ用の撮影スペースです。大きな会見の場合は報道各社は記者だけでなく撮影専門のカメラマンも帯同することがあります。そういったカメラマンは取材意図に沿った写真を撮るために、このスチル撮影エリアに陣取ります。とはいえ、前述のようにムービーカメラが背後から狙っていますので、立って撮影したら記者の視界を遮るだけでなくムービーカメラに映り込んでしまいます。それを避けるために、スチルのカメラマンは常に座りか中腰の姿勢が基本です。

もちろん、カメラマンによっては最前列だと登壇者がアオリ気味になってしまうので、あえて後列の記者席から写真を撮るというパターンもあります。

公式写真の撮影とは

公式写真を使って記事を執筆した例 – Tech+ Powered by マイナビニュース

こういった記者会見では、報道各社の記者やカメラマンが会場に集まって自分たちで写真を撮って記事を書くわけですが、中には取材に訪れることができない媒体社さんもいたりするので、そういった方々が記事を書くときに文字だけでなく写真も掲載できるよう、主催側から媒体社に提供する写真のことを「公式写真」といいます。

公式撮影は主催者側が用意した写真を媒体社に提供するものなので、当然のことながら媒体社が使いたくなるクオリティの写真を撮影する必要があります。そのため、公式カメラマンは撮影に適した場所を優先的に確保します。

これは公式カメラマンの特権といえば特権ですが、それゆえ媒体社のカメラマンの迷惑にならないように注意する必要があります。会見に足を運んで写真を撮ってくれる媒体社は、主催者からすると記事を書いてくれる大切な存在なわけですから、彼らの撮影の邪魔になってはいけません。媒体社から見ると公式カメラマンは主催者側の人という位置づけであるため、主催者サイドのカメラマンが媒体社の邪魔になるようなことをするのはご法度です。

会見の写真とは

会見では仕上がりの記事の論調を想定して、そこから逆算して必要な画を撮っていきます。例えば以下のような記事を書くとします。

○月○日、○○の会場にてA社、B社、C社が合同で○○というサービスを発表しました。これは○○と○○という特徴があって、○○の課題解決を目的としています。なお同社は…

こういった記事で必要なのは各社の登壇者と商品の写真です。今回の会見における商品は「LINE・Yahoo! JAPAN・PayPayマイレージ」というデジタルのサービスであるため、手にとって触れることができるリアル商品はありません。そこで撮影するのがプレゼンテーションの画面です。登壇者とプレゼン画面をセットで撮影することで「○○社の○○さんが、新サービス○○を発表した」という説明を補足する写真として使うことができます。

会見時に撮っておいた方がいい画をざっくりリストアップすると以下のようになります。

  • プレゼンターの寄り引き、中央左右
  • プレゼンターとキースライドのセット
  • プレゼンター複数人のグループショット(複数人が登壇する場合)
  • フォトセッション決めポーズ
  • 質疑応答中の雑感

もちろん、会見の進行や登壇者の状況によって撮影要件は変わってきますので、写真の用途や利用時の文脈などを勘案した上で、都度検討する必要があります。ちなみに、狙っているカットで複数枚シャッターを押してなるべくいいテイクを狙うわけですが、ざっくり以下のような視点でOK判断をします。

  • しっかり目を開いている
  • 口を開いて「しゃべっている」ように見える
  • 身振り手振りなど画に動きが感じられる

逆にあからさまにNGなのは以下のようなテイクです。

  • 瞬きなどで目を閉じている
  • 表情が崩れて変に見える
  • 手元資料の方を見ていてオーディエンスの方を見ていない

実際に撮影した写真の例

この日、実際に私が撮影した写真を例に会見で撮影する写真を紹介します。

この画像の上段左側が登壇者プレゼン中のヒキ画。プレゼンで発表される商品やサービスで最もシンボリックなスライドが投影されているタイミングで撮影すると「会見で○○さんが○○を発表した」という文脈で使うことができます。続いて上段右側はヨリ画です。「○○社の○○社長は…」と、会見で発表する人物を紹介する文脈で使えます。後段の2枚は左右両サイドから撮影したもので、通常はアディショナルカットとして予備的な扱いです。

ただ、場合によってはメインで使う可能性もあります。例えば今回のように演台のサイズが大きくて、正面から撮影するとプレゼンターを胸の位置まで隠してしまうような場合、下段右側の写真のようにサイドから狙うとある程度しっかりと立ち姿を見せることができるようになります。

もう一つの観点はロゴです。上段右上はヤフーの社長がヤフーロゴを背負ってプレゼンしているので、最もオーソドックスなパターンです。一方の下段はLINEやPayPayのロゴとなるわけですが、「ヤフーとLINEの経営統合の成果」という文脈であれば左側の写真がハマりますし、「ヤフーがPayPayを活用した新たなソリューションを展開」という文脈であれば右の写真がハマります。

同様に、複数人が登壇するプレゼンの場合、A社長とB社長が同時に登壇して会話しているようなシチュエーションがあると、両社の関係性を表現することもできます。

そして最後はインサートカットです。発表の一連の流れだけでなく、記事化する際にあったら便利な画を個別に撮影しておきます。例えば冒頭に掲載したイベント会場の外観なども、大規模な発表記事では本文冒頭で掲載されることがよくあります。

会場によっては発表された商品が展示されていることがあります。リアル商品の場合は商品そのものが展示されていたり、インターネットのサービスであれば、パソコンなどが設置されていて、試用できるようになっていたりします。こういったものも個別に撮影しておくと、記事を執筆するときに役に立つこともあります。

ちなみに、今回の会見では上記のようなインサートカットも撮ってみました。iPhoneのまっさらなページに3社のアプリを並べた写真です。LINE、Yahoo! JAPAN、PayPayともにスマホでそれなりに存在感のあるサービスです。それゆえ、こういったカットは読者が各社に対して抱くイメージにも近いため、記事のサムネイルやカバーなどキャッチの画像として使うことができそうです。

まとめ

そもそも記者会見は誰が何の目的で行っているのでしょうか。情報を発信する主催者、情報を伝える媒体社、情報を閲覧する読者、それぞれ以下のような目的があるのではないかと思います。

  • 主催者:発表内容をより多くの人に知ってもらいたい
  • 媒体社:記事をなるべく多くの人に見てもらいたい
  • 読者:気になる情報を詳しく知りたい

これらを満たすためには様々な要件があるわけですが、中でも写真はとても重要です。媒体社が求める写真を適切に提供することで、記事として取り上げてもらいやすくなりますし、文脈上適切な写真を提供できることで、取り上げてもらった記事そのものの訴求力が上がります。結果として、媒体社は訴求力のある記事を書くことで記事そのもののバリューを上げることができ、主催社としてはより多くの人に情報を届けることができるようになりますし、実際に記事を読んだ読者はサービスの内容を正しく理解できるようになります。

このように、記者会見を通じて三方良しの状態を目指すことが大切なのですが、そのためにも読者や媒体社が求める適切な公式写真を提供することは、各プレーヤーが理想の状態に近づくための一助になっているのではないかと思います。

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